医療漫画として絶大な人気を誇る伝説の漫画「ブラック・ジャック」。
「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)にて1973年11月19日号から1978年9月18日号にかけて連載。
1979年1月15日号から1983年10月14日号にかけて不定期連載された。全242話。
国内累計発行部数は4564万部を、全世界累計発行部数は1億7600万部をそれぞれ記録している。
今現在アニメがAmazon prime及びYouTube手塚プロダクション公式チャンネルにて配信している。
50年経った今もなお、「医療とは何か」「生命とは何か」「人としての幸福とは何か」を読む読者、視聴する視聴者に問いかける「ブラック・ジャック」。
主人公間黒男(ブラック・ジャック)とはどういう人物なのか?
見ていきましょう。
間黒男
- 間黒男(ブラックジャック)は8歳の頃宅地造成業者によるずさんな不発爆弾処理が原因で母親と共に爆発事故に遭う。
- そこで運ばれた病院には間黒男が医者となるきっかけを作り、命の恩人となる本間丈太郎名医がいた。
- 身体中がバラバラになってしまったが本間名医による大手術により奇跡的に助かる。
- 全身に無数の手術痕が残ってしまい顔左半分は皮膚の色が異なっている(これはハーフの親友タカシの皮膚を移植したため。エピソード第99話「友よいずこ」)、髪の色が半分白いのは爆発事の恐怖心による影響、必死のリハビリにより半身不随の状態から負傷前と同様の身体能力を回復する。
- 母親は重傷を負い後に言葉が喋れなくなってしまいその後死亡。父親は愛人と共に海外に去る。
- このことにより母親に対する思慕(恋しく思うこと)と事故の責任者たちに対する復讐心を胸に成長する。
- ブラック・ジャックとは間黒男を英語に直訳した名前。
- 本名を名乗らなくなったのは母親と自分を見捨てて愛人と逃げた父親への恨みが理由。
ブラック・ジャックは母親思い
ブラック・ジャックはネット等でマザコンだと言われていますが自分は少し違うと思います。
マザコンとは何でしょう?
大抵は悪い意味の想像をしてしまう人が多いと思います。男にも女にもいますが特に女の人は多いと思います。
いつまでも母親から離れられない人、母親の意見や指示がないと何も出来ない状態の人等だとネットには書いています。
しかしこの「マザコン」という差別的な言葉を男性にむやみやたらに使うのはオススメしない。
自身の幼少期に母親を病気や事故で亡くしてしまっている過去などの辛い経験から他の母親に対して普段と打って変わり優しく接したり、母親を大事に思わない人に怒りを露わにする母親思いや親孝行者もいるのです。
これはブラック・ジャックにとても当てはまり母親のことをとても大事に思っています。
母親がとても恋しい子供の頃共に事故に遭い、母親は四肢全てを失い(無事な部分は黒男の移植に使われた為結果全てを失い寝たきり)父親は女と海外に逃げてしまう。
黒男は子供の頃父親をとても憎み探し出して殺そうと考えていました。
しかし母親が死ぬ前に言った最後の言葉「お父さんを許してやりましょう。良い人だったけど魔がさしたんだよ」。
ブラック・ジャックは「とても素敵な立派なお母さん」と後に再開した父親に言っています。マザコンではなく母親思いなのです。
こうした経緯故に、母子の絆を大切にする者は尊重するが、母親をないがしろにする者に対しては激怒したこともあるのです。
何故医師免許がないのか?
元々は手塚マンガのキャラクターが総出演する短期(5回)読み切り連載の予定でした。しかし人気が出たため、長期連載となり無免許であることに理由が必要となります。
そしてエピソード毎に設定が異なっていて医師免許を所持していた描写もあれば、実際に医師免許を所持していたかが定かではない場面もあります。
それもその筈で元々読み切り連載だった為、そういう細かい設定は用意されてなく、いきあたりばったりで話を進めて行ったのです。
免許を習得しない理由について劇中こう述べられており以下があります。
- B.J.があちこちで患者を脅迫して、世界医師会連盟に苦情が殺到しているため
エピソード第88話「報復」にて述べられている。日本医師会連盟会長自らが自身の息子の手術の依頼をするため、ブラック・ジャックに免許状を手渡しているがその直後、渡された免許状を破り捨てているため、その後も無免許のままであった。
- 肩書きやルールに価値を見出さない
エピソード第188話「肩書き」にて述べられている。国皇帝陛下ブリリアント三世陛下の問いに対しての答えに「賞とか肩書きとかが大嫌いでね」と。
- 医師免許を取り医師連盟に加盟すると、決められた料金しか請求できなくなる
エピソード第88話「報復」にて述べられている。現実にはこのようなことはないが、ストーリーを分かりやすくするために、あえてこの様に設定した可能性があります。
- 爆発事故のトラウマのため
エピソード第71話「けいれん」にて述べられている。少年時代に遭った不発弾の爆発事故の際気胸を発症。その苦痛がトラウマとなって同症の手術の際、メスを持つ手が痙攣を起こしてしまう。それを指摘された際に「私がまともな免許が取れない理由が分かっただろう!」と発言している。
- 医師免許取得のための面接に出席できなかった
エピソード第38話「ピノコ還る!」にて述べられている。「世界医師連盟」により特別に医師免許を交付される事になったが、失踪したピノコの捜索を優先した結果、話は流れる。彼は落胆し、本心では正規の医師に憧れていたことがうかがえる。
- 団体に所属することを嫌う一匹狼的気質のため
エピソード第190話「一匹だけの丘」にて述べられている。「私は団体とか運動にかかわりたくないタチでね」との発言がある。
- 恩師、本間医師への医師会の扱いのため
エピソード第163話「本間血腫」にて述べられている。恩人本間丈太郎医師が患者を治すための新治療法を試すが生体実験ではないかとの非難を受け医師界を追放されたエピソードが語られる。日本医師連盟に対し非難感情を持っている。
免許を剥奪された理由をテレビアニメではこう描かれている。
- 日本で禁じられている移植手術をするかしないかで大学病院の上層部と対立したため、医師免許を剥奪されるオリジナルエピソードが描かれた。
何故大金を請求するのか?一番の目的を含む3つの理由。
ブラック・ジャック「が手術する際に患者に請求する金額は普通の人には払うことさえ困難な大金となります。
しかし大金を請求するのにも理由があるのです。
エピソード毎に語られているところがありますが大きな理由として3つ紹介したいと思います。
- 人の命を助けるための覚悟を確認している
一つ言えることは金の亡者ということではないことです。
何としてでもこの人を助けたい、救いたいという真摯な想い。
目の前にある命これに対して自分の全てを投げ出せる。
これは金持ちだけでなくお金を持っていない人にもブラック・ジャックは問うのです。
手術をお願いするように頼んできたサラリーマンの「こんな金額は支払えない」という言葉に対し「私は人の命を助けるための覚悟を試している。」「命が助かるならこんな金額安いものだ。」と返している。
エピソード第223話「もらい水」にてブラックジャックは「私なら母親の値段は百億円つけたって安いもんだがね」と発言している。
お金のない人でもある人でも、自分の全てを犠牲にして大切な人を救いたいという気持ちが伝わるとブラック・ジャックは救済処置を設けてくれます。
「命はお金では買えない」という原作者手塚治虫氏のメッセージなのかもしれません。
- 不発爆弾処理が原因で母親を死に追いやった関係者に対する復讐用の資金
不発爆弾の原因であった土地の請負に関係した五人を探し出し、報復することが「ブラック・ジャック」という漫画での一番の目的となります。
家庭崩壊の引き金となった事件となっただけに、その強い恨みは消えることが無かった。
作中では見つけた仇は2人であり内1人(エピソード第115話「不発弾」)は復讐に成功。
(地雷原だらけの島に誘い込んで散々恐怖させた挙句、地雷の爆発で重傷を負わせたが、それによって目的は果たしたので治療も行っている。)
もう一方(エピソード第195話「二人目がいた」)は発見時既に意識不明だったので先に治療。その後復讐に移る前に死んでいったことを身内から聞かされ感謝されるという皮肉な結末に。
あと3人を始末するまで復讐は終わらないのだが手塚治虫氏が亡くなってしまいその話を見れることは無くなってしまった。
殺したいほど憎んでいるが、あくまで自分達と同じ恐怖を味わわせるのが復讐の目的なので殺人にはこだわっていない。
個人的には最後まで見たかった、続きを描く人が現れてほしいと切に願います。
- 自然保護・老人ホーム等への援助
エピソード第25話「灰とダイヤモンド」にて述べられている。
ポーランドの詩人ノルヴィトの詩で 「全てのものはいつかは燃えて無くなる、しかしその燃えカスの灰の中から ダイヤモンドのような価値のあるものが産まれ出てくることもあるのだ」 という趣旨の「 破壊と再生 」を詠った詩がある。
何故崖の上に建てられた家に住んでいるのか?
ブラック・ジャックが大学を出てからすぐの話で海に向かった斜面に寂しそうにポツンとたっていた空き家を見つけた。
作り直せば十分住めそうな場所ということで購入しそこで開業。
ある日この家を建てた老大工がリフォームさせてくれと願い出てきたが作業中、広島原爆での被爆により白血病が発病。
大学を出たばかりの自分には治すことが出来ないと判断し、老大工を別の病院に移すことにする。
ブラック・ジャックは家を建て替えずに待っている。
彼が病気を治し帰ってくるのを信じて。
まとめ
「ブラック・ジャック」という漫画は50年経った今もなお、「医療とは何か」「生命とは何か」「人としての幸福とは何か」を読む読者、視聴する視聴者に問いかけています。金の亡者ではないのです。
手塚治虫はこう語ります。「自分がもし医者になるならこんな医者になってみたいと」。
ブラック・ジャックとは手塚治虫氏の分身なのかもしれません。
以上、間黒男(ブラック・ジャック)という人間を書かせてもらいました。
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